『ライオンは今夜死ぬ』ことなんてない。彼の顔さえ恒久的に捉えられるのなら


ジャン=ピエール・レオーの顔芸が素晴らしい。特に下唇を噛んで目を丸しながら細める(目をすぼめると言ってもいいかもしれない。笑)表情では監督もたまらなくなって(笑)暗転させている。顔芸を撮る秒数がまた絶妙で、この映画はジャン=ピエール・レオーの顔芸を日本人の「間」で表現することに成功した奇跡が目に見えるカタチで、日本人じゃなくてもわかるようなわかりやすさで、圧倒的な強度で存在している。レオーの過去の出演作がどうだとか、これはなんかのオマージュとか言いだしたらキリがない作品であり、それを楽しむことがシネフィルの喜びにもなり、快楽に溺れ腹上死できるだろうが、正直そんなことせずとも画面を見つめるだけでいい。ただただ、レオーの表情を見ればいい。老いた彼の顔は常に既に先の不安に怯えており、笑顔は今よりも過去によって構築されている。彼のアンバランスでしかもアンビバレンスな表情を見るだけで、映画的な幸福を得ることはできるはずである。つまりは彼の演技を見るにあたって、知識など本来は必要がない。彼の顔を見つめるだけで、彼は全てを知らせてくれるのだから。