『さんまの「俺は裸だ」』ミスリードとオーバーアクションによる裸のランチ


『さんまの「俺は裸だ」』

明石家さんまが(足の速い、よく駆け回る男として)走るシーンが『太陽にほえろ』のジーパン刑事のごとく描かれるが実際に速く見えるのは、明石家さんまがいま現在走らない(走る姿を見せない)からというのもあるだろうが(笑)、やはりオーバーアクションで身体全体を振り回しているからだろう。これは彼の芸風によるところもあるけれど、大きな動きで表現するには当たり前ながら強調することができる。彼が笑いを強調(もしくは誇張)し、自分を面白い男だと見せているように、足の速い男だと思い込ませている。

ただ、足の速い男が駆け回るのを見せるだけではなく、常に彼は覗かれている。常に既に見られている状態である。だから『さんまの「俺は裸だ」』なのだ。冒頭から明石家さんまが裸であることで、出オチ感漂うラブホテルスタートなのだが、ミスリードを狙っている。

「そして的外れに見える精神科医(奥田瑛二)が」
序盤から登場し彼に付きまとい、彼を精神病だとあえてミスリードに見えるように大袈裟に語るが、実のところほんとうに精神を病んでいたのだ。オーバーアクションとミスリードによって、足の速い男が駆け回る理由が、精神が病んでいるからと明らかになっていく。ここに家に執着する明石家さんまという要素が入り込んでいき、精神を病んでいる理由も明かされていく。

筒井康隆脚本ここにあり。という感じでDVDになっていないのが残念でならない。そしてこれはドラマだ。映画ではない。





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