『半分、青い』が愛は惜しみなく奪う



『半分、青い』


物語上の死に魅了された(殆ど取り憑かれていた)魔女のごとき北川悦吏子が参考にしたのは、誰も死なない『あまちゃん』だったことにも明らかだが、このあえて逆をいく手法で幸せになった人は視聴者にいないだろう。笑


あまちゃん』のように小ネタやオマージュを挟み、彼女は物語にとって特別な死を流し込む。死をアクセントにすることの恐ろしさは作り手ならば解るはずだが、彼女は惜しげも無く殺す。愛は惜しみなく奪う。

そして、片耳が聴こえないというこれまで忘れ去られていた設定(克服していたとは到底思えず、上手に付き合っているというわけでもなく、単に物語の進行に邪魔だから忘却している)を最後に出し「メロディ」という不確かなもので終えるのは、彼女が自分の正しさ(障がいを上手く扱った作品を産み出せる)を示したかっただけだろう。北川悦吏子の無敵感はここにある。この正しさを肯定できるのは破綻を喜びと捉えて笑っている遅れたニヒリズム。もう冷めた破壊では面白いものは作れない。


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