『最高殊勲夫人』はもはやバウハウスである。

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最初から山場のプロポーズまで、ひたすらシンメトリーで攻めている。というのも若尾文子の可愛さや茶目っ気、コメディとベタなラブストーリーをシンメトリーで描くことによって際立てており、お陰でカメラワークは固定からの上下左右に動くという獣的な身体性までもたらしている。これは映画が登場人物がビル化するのを防ぐためである。

山場のプロポーズでは直角のテーブルの角を挟んで両側に立ち、言葉を掛け合う。そして片側から射抜き合い、お互いの気持ちを確認する。これまですれ違っていたふたりが初めて対象化するのだ、対称性から解き放たれて。シンメトリーからの解放がラストに訪れる。結婚のシンメトリーだけを残して。