『運命は踊る』ペーを振り回して。



フォックストロットは決められたステップを踏めばどのような動きをしても元の場所に戻ってくる。これを運命にはめ込んだのがこの『運命は踊る』である。気持ちよすぎるアングルと物語の構成は決められたステップに倣ってあり、どんなに暴れても映画的技法に帰結する。それがフォックストロットからマンボへの移行シーンであり、ダンスシーンを観にきたパンッパンに期待が膨らんだ観客を、三部構成のうちの二部の最初で射精させることに成功している。こうして落ち着いた観客は物語の大仕掛けを雑念なく楽しめる。

「なので謎はすべて」
踊りながら観たとしても分かってしまえるだろう。画で提示された伏線を画によってじっくりと拾っていく。挿入されるのも絵であり、導かれるのはもちろん射精である。全ては射精後の状態に帰ってくる(俺が嘘を言っていないことは映画を観た後にわかるはず。笑)。これは罪の物語であり、その起源は射精にある。射精ではじまり射精で終わる。第3部で妻が服を一枚脱いだのがこれから始まることを示している。

「何回目かの射精直前の話をすると…」
丁寧すぎるほど伏線回収だが、ラストシーンはあまりにも優しい。ミスリードさせたまま終わらせたくないのは、責任を誰かのせいにしたくないからであり、運命だと結論づけてしまえるようにしている。つまり、監督によって強制的に思考のステップを踏まされているのだ。

「さあ、このペニスを握っている手を振りほどこう」
この思考のステップに抗うにはペニスの存在に早々と気付くことである。笑 ヒントはフォックストロットからマンボへの移行シーンにあり、踊る彼は銃を持っている。銃は男性器の象徴である。彼はペニスを中心にマンボを踊っており、これに気づいた瞬間に「ああ、ペニスの物語だあ…」と悟るが勝ちである。笑 おまけに父は最後のベッドストーリーブックで自身の裸に興奮してペニスを握っている。もはやここで爆笑しながら「やっぱりペニスの物語だあ…!!!」と涙を流すしかない。これで思考のステップからはみ出し、全てがペニスと繋がっているように感じるはずだ。笑 その時あなたは、もはや伏線などどうでもよくなっているだろう。

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