この映画のタイトルこそムーンライトでいいんじゃないか『わたしは、幸福』

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「この映画のタイトルこそムーンライトでいいんじゃないか」

と冒頭あたりで思ってしまったのだけれど、それはたぶん監督も1度は思ったことだろうし(もちろん思わなかっただろうし)置いておくとして、アフロアメリカンに月明かりを照らすと肌が青く見えるというのがムーンライトの発見だったが、この映画ははじめから青く見える加工がしてあるというヤバさ。笑これこそがアフリカのフェリシテとも言える。笑 

こんな感じでドラッギーな、というよりドーピングによって倍増された映像美に合わせて悲劇のヒロインが無表情で騒ぎ立てるか音楽にだけ表情(標準)を合わせているかのような顔で歌い、「タブー」と名乗る男が数cmずつ物事を動かしていく。しかしどれだけ動かしても、実際はそんなに動いていない。話は進まないのだ。最後まで。笑

「そんな物語の終盤にドラッグ追加でブーストしバースト」

バーでフロアバンドが演奏する民族音楽と酔っ払った「タブー」の錯乱が合わさり気持ちよくなってきてトランスする寸前で切断されてゴスペルに変わるという地獄。エグい寸止めでハッとする。ここで入眠を妨げているとも言えるが、実のところ、トランスはずっと終盤まで笑わない主役の笑顔と、「タブー」の下手くそな歌によって引き起こされる。笑 この終盤の奇妙なトランスによって観客は変な気分(どうやってイッたかわからないけどイッたのはイッた)で映画館を出ることとなる。笑 実際に婆さん達が困惑した表情で会話しながら出て行ったが、別に不感症になったわけでも呆けたわけでもない。笑 構造的にそうなったのである。しかし、監督はこれを狙ってはいないかもしれない。ドラッグに耐性のない人々は錯綜し、無音のエンドロールで何人も喋り出してしまう(笑)という監督の意図に反した行動さえ犯してしまったからである。