ふたりでタンゴを踊るなら単語なんていらない『ブエノスアイレス』


ブエノスアイレス


「やり直す」とは、何をやり直すのか。わからないまま言っているふたりは、何もやり直すこともないまま、新しく始まることもないまま、旅立ったり、同じ場所にいたりする。ひとりは新しい出会いを断ち切ってまでも過去を引きずり、ひとりは過去をはじめから引きずり続けている。ふたりは常に既に過去を引きずっているにも関わらず、やり直すと言いながらも何を「やり直す」のか、何が「やり直す」なのか、わからないまま現在を過去にしながら引きずっている。その証拠に、ひとりは「もし会おうと思うなら、どこだって会える」と立ち寄った屋台に置いてあったもうひとりの写真を見て言うのだ。

素潜り旬「ふたりでタンゴを踊るなら」
単語なんていらない。笑 と洒落で終わらせるのもあれだが、文字通り言葉なんていらないシーンだ。つまり「やり直す」だなんて言う必要もないのに、言ってしまうから関係は悪化するのだ。やり直し方は分かっているのに、言葉にした時の返し方がわからないようだ。このもどかしさが互いの嫉妬となり、失いたくないのに失ってしまう方へと進んでしまう。ふたりの無軌道なタンゴのように。


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